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ヤクザと家族 [映画]

▼半年ほど前、映画「新聞記者」のDVDをTUTAYAで借りてきて観た。予想外に出来の良い作品で、面白かった。監督は藤井道人という知らない名前で、若い人のようだった。
 安倍内閣当時の菅官房長官の記者会見で、東京新聞の女性記者が菅に詰問を幾度もぶつけ、菅はその記者を徹底的に無視する険悪な関係になっている、というニュースを聞いていた。その女性記者が『新聞記者』という本を出版し、同名の映画はその本の映画化だという話も耳にしていた。だから映画は、社会正義を叫ぶ月並みな作品だろうというぐらいに思っていたのだが、なかなかどうして、活き活きとした会話と緊迫感のある画面が続き、観る者を最後まで飽きさせなかった。
 この監督の他の作品も、是非観たいと思った。調べてみると、「ヤクザと家族 The Family」という映画が2月に上映され、評判も上々ということだった。しかしその上映も終わり、再上映の話は聞かず、DVDとなってTUTAYAの棚に並ぶのは、まだ先のことらしい。
 年の暮れになり、ふと思いついて「ネットフリックス」を調べると、この映画はすでにラインナップの中に入っており、入会すればすぐに観られることがわかった。早速入会の手続きをとり、映画「ヤクザと家族 The Family」を観た。

▼舞台は1999年の、煙突の立つ工場群と海のある地方都市。主人公は髪を金髪に染め、仲間と街なかを小さなバイクで走り回る18歳の不良少年・山本賢治(綾野剛)。親は死に、家族はいない。ある飲み屋で襲われそうになった柴咲組組長・柴咲博(舘ひろし)を救うが、礼を言う柴咲に、オレはヤクザにはならねえよ、と突っ張って答える。
 ある夜、賢治たちは覚せい剤の売人から金とクスリを奪い、バイクで逃げる。しかし翌日、売人の属するヤクザ組織(侠葉会)に見つかり、捕まって凄惨なリンチを受ける。しかし柴咲の名刺を持っているのを見て、侠葉会の幹部は彼らを解放する。
 賢治がリンチを受けたという情報を耳にした柴崎は、彼を組の事務所に呼び出す。傷だらけの賢治を見て、その肩を軽くたたき、えらく頑張ったらしいな、ケン坊、と小声で言った。そして、行くとこあるのか、と尋ねた。突っ張っていた賢治の顔がゆがみ、こらえきれずに泣く。賢治は柴咲組長の盃をもらい、組員となった。

 2005年、若いながら柴咲組の兄貴分に成長した賢治は、夜の店々を回り、やくざ稼業に励んでいる。あるクラブで隣に座った若い女(尾野真千子)を、ママに言ってホテルに呼び出す。しかし抱こうとすると、女は強く抵抗する。賢治は、「ここに来るというのは、そういうことだろ」と言うが、抵抗を静めることができず、あきらめて女のアパートまで車で送っていく。
 柴咲組のシマ内のクラブで、侠葉会の幹部が店にからんでいると聞いて賢治は駆け付け、ビール瓶で頭を殴り店から叩き出した。その問題で、柴咲組長と侠葉会会長・加藤の話し合いがもたれたが、決裂する。
 夜の海に、賢治と賢治を拒んだクラブの若い女がやって来る。いつまでもぎこちなくオマエ呼ばわりする賢治に、女は、自分は由香という名前だと伝える。
 「ねえ、なんでヤクザやってんの?」
 「……家族だから……」
 「本当の家族は?」
 「……いない」
 「私もいない……」
 不器用な会話ながら、二人の距離が少しずつ埋まり、近づいていることを観る者に教える。

 柴咲組長が賢治をお供に釣りに出かけた車が狙撃され、柴咲は無事だったが賢治は足を射抜かれ、運転手の弟分は即死した。弟分の葬式に来た「マル暴」担当の刑事は、「この一件、我々が処理しますので動かないで」と、柴咲に言った。「オヤジを的にかけたのは加藤だ」といきり立つ組員に対し、刑事は、「それでは柴咲組全員が路頭に迷うことになりますよ。これからヤクザを裁くのは法や警察だけではない。世の中全体に排除される。時代は変わっていくんですよ」と言った。
 入院中の賢治は、見舞いにきた柴咲から、「今回の件は警察にケツを預けることになった」と知らされ、自分で決着をつける決心をする。病院を抜け出し、クラブで遊んでいた侠葉会の幹部をめった刺しに刺殺する。その足で賢治は由香のアパートに寄り、はじめて彼女を抱く。
 賢治は翌日逮捕された。

▼2019年、賢治は出所するが、14年ぶりの社会は大きく変わっていた。暴力団対策法や暴力団排除条例がつくられ、ヤクザ組織は経済的に絞めつけられ、組員はやめていった。
 ヤクザから足を洗い、いまは産業廃棄物処理の仕事をしている弟分は、5年は地獄ですよと言った。「5年ルールといって、ヤクザやめても人間として扱ってもらうには5年かかるんですよ」。そして、兄貴とつきあえばオレ、「反社」「反社」って言われちゃうんです、と言って帰っていった。
 柴崎組長はガンを患っていた。亡くなる直前、見舞いに来た賢治に、「組を解散しようと思ったが、ヤクザにしかなれなかった連中を、どこが拾ってくれるよ……」と言い、「お前は組を抜けろ、お前はまだやり直せる」と言って息を引き取る。
 賢治は組を抜け、弟分の紹介で産廃処理の会社で職に就く。14年前に別れた由香の行方を探し、市役所で働いているのを知り、再会を果たす。しかし由香は、もう会わない方がいいと思うと言い、話の中で中学生の娘がいることを明らかにする。
 もう会わない方がいいと言った由香だったが、結局賢治をアパートに泊まらせることになり、母娘と賢治の平穏で幸せな日々が始まった。
 しかし平穏な生活は、長くは続かなかった。賢治と弟分が一緒に写った写真がSNSにアップされ、賢治がヤクザであることや殺人罪で収監されていたこと、由香と同棲していることなどが、ネットにつぎつぎに書き込まれる事態が発生した。由香は勤め先から退職するように迫られ、娘も転校を余儀なくされる。
 弟分は産廃処理会社を解雇され、絶望して家に戻ると、妻は娘を連れて姿を消していた。
 港の突堤の上でぼんやり海を眺めている賢治に、後ろから近づいた弟分が刃物を突き刺し、泣きながら、「あんたさえ戻ってこなければ……チクショー、チクショー……ゴメン……」と叫ぶ。賢治の身体は海に落ちた。

(つづく)

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