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奈良の旅 [旅行]

▼9月の終りに奈良へ行った。
 30年以上前に年に一度、一緒に旅をする仲間ができ、日本各地を回ってきたのだが、この3年間は「新型コロナ」のために旅行会は休止だった。今年は4年ぶりの再開=再会というわけである。仲間との再会の場所は、今年は飛鳥の里と決まったが、筆者は一日早めに奈良へ行き、ひとりで少し歩いてみることにした。
 筆者はこれまでに、ほとんど奈良を訪れたことがない。母親が和歌山の出身だったから、和歌山のその実家には、子どものころから何度も夏休みに行っていた。奈良に近い、高野山にも行ったことはある。しかし奈良には中学か高校の修学旅行で行ったきりであり、それは60年も前の出来事だから、具体的な記憶は何も無いに等しい。大仏も法隆寺も、実際に観たことはなかった。

▼近鉄奈良駅に昼前に着き、歩き始めてじきに猿沢池が目の前に現れた。どことなく既視感のある風景に見えたが、自分が実際に見た60年前の記憶があるはずがなく、写真やTVの映像で観たものが頭に入っているのに違いない。池の近くのホテルに荷物を置き、来る途中で目についた興福寺に行ってみることにした。
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【猿沢池。祭りがあるらしく、池の周囲に提灯を巡らしてあった。】
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 興福寺の境内には修学旅行で来たらしい小中学生の団体が幾組もおり、記念の集合写真を撮っていたが、寺は十分な広さがあるのでそれが少しも邪魔にならない。しばらく境内の雰囲気を楽しんだ後、国宝館に入った。
 目当ての一つは阿修羅像である。少年の姿をした三面六臂(3つの顔と6本の腕)の像はたいへん有名だから、筆者ももちろん知っていたが、実物を実際に見る機会があるとは思っていなかった。たまたま奈良へ行くことになり、ホテルの近くの興福寺に置かれていると知って、にわかに見たいという意欲が起きたのである。
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【館内は撮影禁止のためネットから得た阿修羅像の写真】
 実物は150㎝ほどの高さで、他の仏教の守護神7体と一緒に、「八部衆立像」の一つとして展示されていた。阿修羅はインド神話では戦闘の神であり、激しい怒りの形相で表現されるというが、興福寺のものは華奢な腕と身体の少年の姿で造られている。奈良時代の像の作者に、現代の芸術家のような「個性的」な表現を求める意識があったはずはなく、どのようにして怒りの阿修羅像が静謐な少年の像に転換されたのか、その謎はきわめて興味深いと思った。
 もう一つ驚いたのは、木彫だとばかり思っていた像が、「脱活乾漆造」という作り方でつくられていると説明があったことである。
 説明によると、木組みの上に粘土で像の形をつくり、その上から麻布を捲いて漆で固める。それを幾度か繰り返し、外形ができたところで背後の一部を切り開いて窓を開け、ここから粘土を外に掻き出す。穴をふさぎ、木くずと漆を混ぜた材料で表面を調整し、彩色や箔をほどこして完成。木組みが像の補強となっている。
 完成した像は重さ15㎏と軽量だから、火事や騒乱のような場合に容易に運び出すことができ、それゆえに現代まで残った、という説明だった。
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【昼食の柿の葉寿司。サケとサバの押し寿司を柿の葉で包んでいる。有名だがそれほど美味いものでもなかった。】

▼午後、法隆寺へ行った。近鉄奈良駅からバスで1時間、斑鳩の里にある。バスを降りたのは筆者一人、寺についてからも観光客はわずかで、誰にも邪魔されずにのんびりした気分を味わうことができた。
 法隆寺は、7世紀初めに聖徳太子が建立した寺である。一度焼けるが、8世紀初めに再建され、世界最古の木造建築物として世界文化遺産にも登録されている。
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【上:南大門から中門へ 下:中門とその内側の五重塔】
 南大門をくぐり、歩いていくと中門がある。回廊で囲まれた空間の中、中門から見て左に五重塔、右に金堂が置かれているのだが、高さのある塔とボリュウム感のある金堂が若干左の方に寄って、視覚上の絶妙なバランスをとって配置されているのだと、事前に読んだ建築の書物には書かれていた。
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【左:五重塔 右:金堂 手前:中門の庇 奥:講堂】
 ついでに建築のウンチクを少し披露すると、5階建てに見える五重塔にも2階建てに見える金堂にも、各階の床が張ってないのだそうだ。つまり建築基準法の上では、五重塔や金堂は、平屋の扱いとなる―――。
 西院伽藍を駆け足で見たあと、東院伽藍の夢殿を見、帰路はJRの電車に乗って帰った。
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【上:東院伽藍への道 下:夢殿】

 ホテルでは町の銭湯と提携して無料の利用券をくれたので、夜、食事かたがた街に出、銭湯で疲れをいやした。この日の歩数は1万9千7百歩だった。

(つづく)

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